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今月初めに石破首相が辞任を表明したことで、日本の政治状況はさらに一層混迷を深め、長らく政界を支配してきた自由民主党の勢力衰退も鮮明になりました。気候・エネルギー面では、近年の政策決定過程における意思決定の不透明さに対する懸念が広がっています。こうした不透明さが増す中、日本は、科学的な根拠に基づく、独立した気候評議会を設置することにより、気候ガバナンスに対する信頼を高めることができるでしょう。
気候評議会を支持する声は、ゆっくりですが着実に広がっています。支持者には、信頼できる第三者のチェック体制を求める政治家、透明性や一般市民が政策議論に参加できる仕組みを求める市民団体、そして、多様な企業の声を反映した議論、長期的で明確なクリーンエネルギー優先の政策を求める企業が含まれます。気候評議会は、日本の将来的な気候・エネルギー政策の正当性と強靭性を確保する助けとなります。
気候評議会は科学主導の信頼できる政策をサポート
各国は持続可能な未来への道筋を確実にするため、今こそ行動を起こす必要があります。そのためには気候ガバナンスの強化が不可欠です。信頼に足る気候ガバナンスを実現するためには、気候変動対策の枠組みに関する法律、政府間の調整機関、そして市民の参加が欠かせない要素となります。
2008年以降、世界の25か国以上が気候変動に関して政府へ助言する気候評議会を設置し、これらが連携する国際組織として国際気候評議会ネットワーク(ICCN)が形成されました。これらの評議会は気候変動対策を強化しており、例えばオーストラリアの気候変動局(Climate Change Authority)は、政府に責任を課し、目標達成に向けた進捗を明確にするためのセクター別ロードマップを提示しています。
日本は、独立した気候諮問評議会に専門家を任命するとともに、自国に適した根拠に基づく政策を策定・実行するための強固な事務局を置くことを検討すべきです。気候評議会があれば、自国の情勢に応じた科学的な助言を受けることができ、それを基に独立性の強い政策立案が可能となります。さらに、日本の気候評議会が設立されれば、より幅広い関係者の参加も促進されるでしょう。チリの科学気候評議会 (Scientific Climate Council) は、国家排出量削減目標(NDC)の策定に向けた準備段階で科学的会合を支援し、その実現を後押ししました。
すべての国に当てはまるモデルはない
日本の気候評議会は、自国の政治体制や背景、気候・エネルギー政策の現状に合ったものでなければなりません。ICCNの「気候評議会の設立方法」ツールキットが示すように、すべての国に共通する一つの気候評議会モデルは存在しません。しかし、既存の各国の評議会は、どのような形態や役割が考えられるかについて、非常に参考になる事例となります。
韓国の「カーボンニュートラルおよびグリーン成長に関する大統領委員会」(共同委員長:金相浹、大統領)は、政府間の調整で効果的な役割を果たしています。パキスタンで新設された気候局は、国の気候基金の運営責任を負っています。日本の気候評議会は、ニュージーランドやグアテマラ、英国などの事例のように、関係者同士の対話不足を解消し、透明性をより高める役割を果たせるでしょう。
日本での政治的好機
日本の最近の動向は、気候評議会のモデルに対する関心の高まりにつながる可能性があります。同国では現在、政治勢力の細分化が進んでいる為、党派を超えた、中立的な専門的助言を提供する上で独立の気候諮問機関は極めて有効です。また、第7次エネルギー基本計画が閣議決定されて間がなく、次の更新が数年後になるとしたら、これはもっと公正で透明性の高い気候・エネルギー政策決定の土台を築く重要なチャンスとなります。
独立した気候諮問機関の日本での設立を提案し始めている政党もあります。自民党と連立与党である公明党は、2025年5月に発表した平和創出ビジョンに「気候変動に関する第三者機関」の設置を盛り込んでいます。同様に、立憲民主党は2023年に未来世代委員会を立ち上げました。独立した気候評議会を後押しする流れが強まっており、気候変動政策に関する党派を越えた合意の余地が生まれています。
独立した気候評議会への若者や企業の支持が増加中
日本では、気候評議会モデルを支持する声は若年世代で特に顕著です。日本若者協議会は、気候評議会など、法律に基づく第三者機関をもっと増やすよう提言しています。同協議会のレポートは、将来世代に資する気候変動政策には客観的な政策策定と第三者機関による検証が必要だと述べています。
では、企業の方はどうでしょう。日本の企業は、世界の中でも率先して気候目標を設定しており、再生可能エネルギーへの移行計画立案にも積極的です。We Mean Business連合によると、日本の企業リーダーの96%が化石燃料から再生可能エネルギーへの転換を望んでおり、再生可能エネルギーによる発電システムへの移行を望む割合も60%近くに上ります。
気候評議会は、科学的根拠を基にした大胆な政策を推進する上で欠かせない重要な支援者を獲得できるかもしれません。特に、200社を超える主要な日本企業による連合体である日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)は、エネルギー政策がしばしばエネルギー供給事業者に偏っている点を指摘し、多様性ある委員構成と、透明性および公正性に配慮した政策決定プロセスの必要性を訴えています。
戦略的に連携し、共同で評議会設置を求めることが必要
独立した気候評議会を設立すれば、根拠に基づく対策を求める幅広い声を、強力で永続的な組織に転換することができます。
最大の効果を得るためには、政党や若者団体、企業グループからの提案を政府の政策サイクルと戦略的に連携させる必要があります。特に注目すべきタイミングは、2027年4月以降の予算や長期的な政策方針を決定する、来年6月の「骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)」です。
この機会を逃さず気候評議会を設立することで、気候危機を回避し安全な未来を築くという共通の目標が国全体で共有され、日本の国際的信頼もさらに高まることでしょう。
世界には少なくとも25の気候評議会があります。国際気候評議会ネットワーク(ICCN)は、気候政策について政府に助言することを公式に委任された各気候評議会のネットワークであり、拡大を続けるネットワークが担う業務を支援・強化します。
アジア、特に日本で気候ガバナンスを強化するチャンスについて詳しく知るために、10月8日(水)のICCNウェビナーに登録してください。
 
                         
				        